コンテンツに進む
コレクション: 藤本健
沖縄の生木を使って、うつわをつくる。
通常、木工の世界では、成形後の歪みや腐食を防ぐため、しっかり乾燥などを施した用材を材料とする。しかし藤本さんが使うのは現地の生木だ。かつてはミリ単位の歪みも許さぬ家具づくりを専門としていた藤本さんにとって、ねじれも反りも容赦なしの生木を使うことは、家具以外のものをつくることを決意するのと同義だった。そうして彼はうつわをつくる作家になった。
普通なら加工前に切り落としてしまうような木の節目や穴さえもそのまま残した生木は、旋盤で削り出された後にも呼吸を止めない。やがて自ら望むかたちに落ち着くまで、それはのびのびと歪んでいく。椀状の形をしているのに、底近くに穴が開いているうつわだってある。
食器、花器、オブジェ……、
果たしてこれらは実用すべき「道具」か、それとも鑑賞すべき「作品」か。
藤本さんは「人によって見立てが変わるから面白い」と語る。そして自身のうつわ作りの主役は、素材としての木の個性でも、また具体的な用途でも、作家・藤本健でも無いという。ただ数百年後の骨董屋で自分の器が作者不詳のまま売られている光景を夢想しながら、彼は今日もぼくらに飄々と「空白」を捧げ出す仕事を続けている。何を乗せ、どんなものを読み込んだって構わない。そうだ。このひとがつくっているのは、まさしく〈うつわ〉そのものであったのだ。
- 選択結果を選ぶと、ページが全面的に更新されます。
- 新しいウィンドウで開きます。